9R
スプリングドライブ
9Rスプリングドライブは着想から実に20年以上もの年月を費やして開発され、さらに5年をかけて、グランドセイコーの冠を付すにふさわしい性能を実現させたのち満を持して2004年に誕生しました。長野県塩尻市に拠点を置くマニュファクチュールである、セイコーエプソン塩尻事業所内「信州 時の匠工房」で製造され、その地で腕時計としての完成品まで組み上げられています。
9Rスプリングドライブは、機械式時計と同様に、ぜんまいがほどける力を動力源としながら、ICと水晶振動子によって正確に精度を制御するグランドセイコー独自のムーブメントです。
クオーツ式時計のような一秒ずつのステップ運針でもなければ、機械式時計のような細かく刻むビート運針でもない。音もなく、ダイヤルの上を滑る「スイープ運針」が、自然な時の流れを体現します。
メカニズム
9Rスプリングドライブの制御システムは、機械式時計に用いられるぜんまいを動力としながら、クオーツ式時計に用いられるIC・水晶振動子の電気信号を利用し、電磁ブレーキをかけるという独自の調速機構「トライシンクロレギュレーター」です。この機構は、ぜんまいのほどける力が、ローターとコイルが巻かれた「ステーター」に伝わることで発生するわずかな電気エネルギーを利用して、水晶振動子とICを動かします。水晶振動子に電力が伝わることで、クオーツと同等の1秒間に32,768Hzという正確な信号をICに発信します。ICは、水晶振動子からの正確な信号とローターの回転速度を比較し、ローターが速くなり過ぎないよう断続的に磁力のブレーキをかけて、一定の速度に保ちます。ローターの回転が一定に保たれることで、ローター、歯車、針の順に制御された動きを伝え、正確な秒針の動きを生み出しています。トライシンクロレギュレーターは、伝統的な機械技術と最先端のクオーツ技術をあわせ持つ、革新的かつ独創的な機構です。
トライシンクロレギュレーター
TRI【3つの】SYNCHRO【同調させる】REGULATOR【調速機】とは
1. 機械的な力（動力:ぜんまい）
ぜんまいのほどける力で発電
例えば自転車のライトはタイヤを回す力を利用して発光します。
スプリングドライブは同じ原理を利用して電力を発生させており、ローターとコイルが巻かれた「ステーター」が発動機の役割を担っています。
ローターが1秒間に8回転することで、わずかな電気エネルギーが発生します。
2. 電気信号（正確な信号:IC・水晶振動子）
水晶振動子が正確な信号を発信
わずかな電気を利用して、水晶振動子とICを動かします。
水晶振動子に電力が伝わることで、クオーツと同等の一秒間に32,768Hzという正確な信号をICに発信します。
3. 磁力（ブレーキ:ローター・ステータ）
ローターにブレーキをかけて調速
ICは水晶振動子からの正確な信号とローターの回転速度を比較し、ローターが速くなり過ぎないよう断続的に磁力のブレーキをかけて、一定の速度に保ちます。ローターの回転が一定に保たれることで、ローター、歯車、針の順に制御された動きを伝え、正確な時を刻んでいます。
この3つが相互作用して、正確な秒針の動きを生み出します。
※本ページに使用している画像は9RB2のものです。ムーブメントの構造、パーツの仕様はキャリバーによって異なります。
匠の技による組立・調整
機械式時計とクオーツ式時計の利点を掛け合わせたスプリングドライブ。部品数は数百以上にのぼり、その組み立てには極めて多くの微細な箇所に、適切な種類と量の油を丁寧に注す工程が含まれます。時計の性能と耐久性を左右するこの作業は、熟練の技術と集中力を要する、非常に手の込んだものです。
時計の設計図は0.01mm単位で記されており、最終的に部品を0.01mm以下の単位で加工・調整していくのは、ロボットでもコンピューターでもなく、人間の目と手なのです。
長く太い針
クオーツ式時計は、高精度ながらもトルクが小さいため、太い針を動かすことは困難です。一方、ぜんまいを動力源とする機械式時計は、精度こそクオーツには劣るものの、トルクが大きく太い針を回すのに適しています。
クオーツ式時計の高精度と機械式時計の大トルクを両立させたスプリングドライブだからこそ、グランドセイコーらしい長くて太い針を正確に動かすことができるのです。
スプリングドライブ クロノグラフ
一般的に、機械式クロノグラフでは、ストップウオッチを作動すると時計の駆動時間が減り、ぜんまいのトルクが少なくなると計測精度もばらつきが発生することがあります。スプリングドライブ・クロノグラフは、輪列の構造や歯形設計を徹底的に検討し、機械的な負荷を極限まで抑えることで、発電に必要なトルクを確保し、クロノグラフ動作時の負荷が増えた場合でも72時間の持続時間を保持し、且つ、平均月差±15秒（日差±1秒相当）の高精度を維持します。
9R スプリングドライブ 搭載モデル
9Rスプリングドライブムーブメント
ムーブメント比較
| ムーブメント | 精度 | 持続時間(最大巻上時) | 石数 | その他機能 |
|---|---|---|---|---|
| スプリングドライブ U.F.A. Caliber 9RB2 (自動巻（手巻つき）) |
年差±20秒（平均月差±3秒相当） | 約72時間（約3日） | 34石 | - オフセットマジックレバー
- ワンピースセンターブリッジ - 日付表示機能 - パワーリザーブ表示機能 |
| スプリングドライブ 5 Days キャリバー 9RA2 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約120時間（約5日） | 38石 | - オフセットマジックレバー
- デュアルサイズバレル - ワンピースセンターブリッジ - 日付表示機能 - パワーリザーブ表示機能 |
| スプリングドライブ 5 Days キャリバー 9RA5 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約120時間（約5日） | 38石 | - オフセットマジックレバー
- デュアルサイズバレル - ワンピースセンターブリッジ - 日付表示機能 - パワーリザーブ表示機能 |
| 手巻スプリングドライブ8DAYS キャリバー 9R01 (手巻) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約192時間（約8日間） | 56石 | - パワーリザーブ表示機能
- 時差修正機能 |
| 手巻スプリングドライブ キャリバー 9R02 ( 手巻) |
平均月差±15秒（日差±1秒相当） | 約84時間（約3.5日間） | 39石 | - トルクリターンシステム
- デュアル・スプリング・バレル - パワーリザーブ表示機能 |
| 自動巻スプリングドライブクロノグラフ GMT キャリバー 9R96 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約72時間（約3日間） | 50石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 - 24時針*1（デュアルタイム表示機能） - ストップウオッチ機能(30分計・12時間計) - カレンダー連動時差修正機能 |
| 自動巻スプリングドライブクロノグラフ GMT キャリバー 9R86 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±15秒（日差±1秒相当） | 約72時間（約3日間） | 50石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 - 24時針*1（デュアルタイム表示機能） - ストップウオッチ機能(30分計・12時間計) - カレンダー連動時差修正機能 |
| 自動巻スプリングドライブ GMT キャリバー 9R66 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±15秒（日差±1秒相当） | 約72時間（約3日間） | 30石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 - 24時針*1（デュアルタイム表示機能） |
| 自動巻スプリングドライブ キャリバー 9R65 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±15秒（日差±1秒相当） | 約72時間（約3日間） | 30石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 |
| 自動巻スプリングドライブ GMT キャリバー 9R16 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約72時間（約3日間） | 30石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 - 24時針*1（デュアルタイム表示機能） |
| 手巻スプリングドライブ キャリバー 9R31 (手巻) |
平均月差±15秒（日差±1秒相当） | 約72時間（約3日間） | 30石 | - デュアル・スプリング・バレル
- パワーリザーブ表示機能 |
| 自動巻スプリングドライブ キャリバー 9R15 (自動巻（手巻つき）) |
平均月差±10秒（日差±0.5秒相当） | 約72時間（約3日間） | 30石 | - 日付表示機能
- パワーリザーブ表示機能 |
- GMT（Greenwich mean time）機能とは、時針と24時針がそれぞれ別の時刻を示すことで、時差のあるふたつのタイムゾーンの時刻を表示できる機能です。
