9S
メカニカル


1998年に誕生した9Sメカニカルムーブメントは、岩手県雫石町の静謐な森に囲まれて建つ世界有数のマニュファクチュール「グランドセイコースタジオ 雫石」で製造されています。
ムーブメントの外観に雫石の情景をインスピレーション源とした温かみのある流線形の意匠をとり入れるなど、細部の仕上げにも趣向を凝らしています。
9Sメカニカルは、最新技術と匠の技を融合したマニュファクチュールならではの時計づくりを行っています。
数百ものパーツで構成される機械式時計は、その精細さがムーブメント精度を大きく左右します。そこでパーツの加工精度を最大限に高めるために、脱進機の製造に先端技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を採用しています。
しかしながらどんなパーツもそのまま組み上げるだけでは、グランドセイコーにふさわしい精度は実現できません。
機械式時計の仕組みを知り尽くすとともに優れた技能を持つ職人の手作業で、パーツ同士の最適な組み合わせを探りながら1/100mm単位で調整し、丁寧に組み上げられています。独自の精度規格「グランドセイコー規格」を満たした確かな品質のもと、9Sメカニカルは精緻な時を刻みます。
メカニズム
機械式時計は、ぜんまいを動力源としています。針の動きで時刻を知らせるスタイルの時計が誕生して以降、変わることなく受け継がれる駆動方式です。
巻き上げられた動力ぜんまいが解けようとする力を利用して、歯車を一定のスピードで回転させるこの駆動システムは、「てんぷ」「アンクル」「がんぎ車」で構成される調速・脱進機構によって、精度を調整しています。
動力ぜんまいが解けようとする力がそのまま針に伝わると猛スピードで針を回転させてしまい、正しい時刻を刻むことができません。調速・脱進機構が正しい時刻を刻むよう歯車の回転をコントロールしています。
「脱進機(がんぎ車、アンクル)」を通して、「調速機(てんぷ)」にぜんまいの力が伝わることで、てんぷに取り付けられたひげぜんまいが伸縮してんぷが往復運動を続けます。
てんぷのこの規則正しい往復運動がアンクルに伝わり、がんぎ車の回転を一定の速度に制御しています。
こうして動力ぜんまいは一定の速度で長時間かけて解けていき、その一定の動きが輪列に伝わり、時針、分針、秒針を正確に動かして時を表示しています。
精度を司る「ひげぜんまい」の調整
「ひげぜんまい」は機械式時計の精度を司る最も重要な心臓部です。
渦巻き状の形をしているひげぜんまいは、一つひとつ違った個性をもっています。熟練の職人は、それぞれの個性に合わせて渦巻きの隙間にピンセットを入れ、指先の感覚を頼りにわずか1/100mmの微細な調整を繰り返していきます。
精度を支える柱「てん輪」
てんぷの輪の部分である「てん輪」は、アンクルの反復運動を調節・制御し、一定速度に保つ役割を果たしています。回転を安定させるために0.000001g単位で重量調整が行われるほど、時計の精度を左右する重要なパーツのひとつなのです。
非常に繊細なパーツであるため、わずかな温度変化が収縮や膨張の原因となって、変形してしまうこともあります。
そこで9Sメカニカルでは、通常2〜3本である支柱を4本に増設することで、支えをしっかりとし、温度差がてん輪の形状、ひいては精度に与える影響を少なくしています。
部品をつくる手間が格段に増すことは承知のうえで、変形を防ぐための工夫を凝らしています。
「歯磨きの名人」
動力が歯車から歯車へと伝わる際、伝達ロスが多く発生しては、持続時間を長く保つことはできません。
動力源であるぜんまいの限られた力を効率よく伝達するために、「かな」を職人が一つひとつ、丁寧に磨き上げています。
この歯磨きの作業は、歯車を精巧な造形に仕上げることで、同時に摩擦を最小限に抑えて、部品寿命を延ばすことにも繋がっています。
高精度なパーツづくりを支える
先端技術「MEMS」
高精度なパーツをつくるために、9Sメカニカルでは脱進機の製造に先端技術「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」を採用しています。MEMSは半導体などの超精密部品に用いられる最先端の加工技術で、0.001mm単位の精度で軽量なパーツをつくることができます。
徹底した品質管理

機械式時計の携帯使用時の精度は、ムーブメントの構造上の理由により、使用される環境の違い(ぜんまいの巻上げ具合、温度環境、姿勢=時計の向きなど)によって変化します。グランドセイコーでは、独自の精度規格「グランドセイコー規格」を設けることでグランドセイコーの機械式時計の優れた性能を証明しています。
すべての9Sメカニカルは、この厳格な規格に基づく「グランドセイコー規格検定」に合格することを条件としております。ケース組込み前のムーブメント単体の状態で、製造工場内の人工的に管理された様々な環境下において規定された日数にわたって時間の進み/遅れ(日差)を計測し、それらの数値が基準内にあるもののみに「グランドセイコー」の名を冠することを許されます。
※本ページに使用している画像は9SA5のものです。ムーブメントの構造、パーツの仕様はキャリバーによって異なります。
9S メカニカル 搭載モデル
9Sメカニカルムーブメント
ムーブメント比較
| ムーブメント | 静的精度*1 | 携帯精度 | 持続時間(最大巻上時) | 振動数 | 石数 | その他機能 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| メカニカルハイビート36000 80 Hours キャリバー 9SA4 (手巻) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+8~-1秒 | 最大巻上時約80時間 | 36,000振動/時(10振動/秒) | 47石 | · デュアルインパルス脱進機
· ツインバレル · パワーリザーブインジケーター |
| Hi-Beat 36000 3-Day Chronograph キャリバー 9SC5 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+8~-1秒 | 最大巻上時約72時間 | 36,000振動/時(10振動/秒) | 60石 | - クロノグラフ
- デュアルインパルス脱進機 - ツインバレル |
| Hi-Beat 36000 80 Hours キャリバー 9SA5 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+8~-1秒 | 最大巻上時約80時間 | 36,000振動/時(10振動/秒) | 47石 | - デュアルインパルス脱進機
- ツインバレル - 瞬間日送り機構 |
| メカニカルハイビート36000 GMT キャリバー 9S86 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+8~-1秒 | 約55時間 | 36,000振動/時(10振動/秒) | 37石 | - 日付表示機能
- 24時針*2(デュアルタイム表示機能) |
| メカニカルハイビート36000 キャリバー 9S85 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+8~-1秒 | 約55時間 | 36,000振動/時(10振動/秒) | 37石 | - 日付表示機能 |
| メカニカル自動巻3DAYS キャリバー 9S68 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+10~-1秒 | 約72時間(約3日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 35石 | - 日付表示機能 |
| メカニカル自動巻3DAYS GMT キャリバー 9S66 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+10~-1秒 | 約72時間(約3日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 35石 | 日付表示機能、24時針*2(デュアルタイム表示機能) |
| メカニカル自動巻3DAYS キャリバー 9S65 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+10~-1秒 | 約72時間(約3日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 35石 | - 日付表示機能 |
| 手巻メカニカル キャリバー 9S64 (手巻) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+10~-1秒 | 約72時間(約3日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 24石 | - 日付表示機能なし |
| 小秒針つき手巻メカニカル キャリバー 9S63 (手巻) |
平均日差+5~-3秒 | 日差+10~-1秒 | 約72時間(約3日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 33石 | - 日付表示機能なし
- パワーリザーブ表示 - 小秒針 |
| 小型メカニカル自動巻 キャリバー 9S27 (自動巻(手巻つき)) |
平均日差+8~-3秒 | 日差+10~-5秒 | 約50時間(約2日間) | 28,800振動/時(8振動/秒) | 35石 | - 日付表示機能 |
- グランドセイコー独自の規格に基づき、工場出荷前にムーブメント単体の状態で、6姿勢差・3温度差の条件下で測定した場合の精度です。実際にお客様がご使用になる環境下での精度(携帯精度)とは異なります。また、メカニカルモデルの特性上、ご使用になる条件(携帯時間、温度、腕の動き、強いショックや振動)によっては、前記の精度の範囲を超える場合があります。
- GMT(Greenwich mean time)機能とは、時針と24時針がそれぞれ別の時刻を示すことで、時差のあるふたつのタイムゾーンの時刻を表示できる機能です。





















































































