GS Grand Seiko

PRODUCT STORY 2美しい文字板を実現する、
高度な技術。

文字板工房は、金型からプレスで文字板の原型をつくり、めっきや塗装などを施し、切削や穴開け加工をしてから、文字を印字し、ロゴやインデックスなどを手作業で取り付ける。それぞれの分野にそれぞれのクラフトマンがいて、ほとんどの工程に熟練した技が要求される。

たとえばインデックスは、鏡面に磨き上げられた小さな部品を手作りのアクリル製ピンセットで傷つけぬように柔らかく、しかし、しっかりとつまみ上げ、直径0.3㎜にも満たない小さな穴にインデックスの「足」を確実に納めていく。この時、穴はつまんだ部品で隠れて見えない。あくまで勘で置いていく。素人では部品をつまむことすら難しい。その他の工程も同様で、グランドセイコーの顔をつくるには、さまざまな分野の匠がそれぞれの仕事を高い水準で進めていかなければならない。そのために必要な分野の職人を育て、高度な技の開発と継承を図ることも文字板工房の仕事だといえる。

インデックスを雪白文字板に取り付ける。アクリル製の専用ピンセットは、クラフトマンが自分で作り、毎日、調整を繰り返す。

ところで「雪白」文字板誕生のきっかけとなった1971年製の文字板サンプルは、その後、当時のグランドセイコーのものであることがわかった。通称56GSと呼ばれた、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)が製造した機械式グランドセイコーのモデルのひとつで、円形ではなくトノー形をしており、文字板は白ではなくゴールド色に仕上げられ、ケースは18Kイエローゴールドで文字板と同じく岩肌のような模様が表現されている。
「信州で生み出されたスプリングドライブ」を搭載するグランドセイコーを象徴する文字板の誕生のきっかけとなったサンプルが、34年前に諏訪精工舎が手がけたグランドセイコーのものだった。誰もが「不思議な偶然」というが、もしかすると真鍮の文字板サンプルは、グランドセイコーという名の、見えないオーラを放っていたのかもしれない。

型打ち、切削、めっき、印刷、ロゴ・インデックス植えなど各工程を示すサンプル。一枚の真鍮プレートが「雪白」になるまで80を超える工程が必要である。