時代を超えて受け継がれる
日本の美意識の結晶「セイコースタイル」

セイコースタイル誕生秘話

「セイコースタイル」は、「燦然と輝く腕時計」を実現するべく、日本特有の美意識を原点として編み出された独自のデザイン文法です。この文法は、当時、服部時計店のチーフデザイナーによって確立されました。銀座の和光本館に足しげく通い、世界の高級腕時計をつぶさに検分していた彼はある日、重要なことに、はたと気づきます。「同じ腕時計でも、キラキラと輝くものもあれば、光がだれているものもある」。腕時計を構成している「面」の形状や張りによって、「輝き」に大きな違いが生じていることを見出したのでした。「グランドセイコーが、腕時計の本質を究めながら、高級腕時計としての普遍的な価値を作り出すために必要なのは、燦然とした輝きである」̶そう確信したデザイナーは、外装工場の職人たちとともに、燦然と輝く腕時計を作るべく、研究に着手しました。どういう造形であれば、燦然と輝くのか、いかに美しくできるのか。試行錯誤を重ねた末に作り上げたのが、セイコースタイルでした。

日本人は絶えず光に心を配り、光と陰の間に無数のグラデーションを感じ取ります。そして、光と同じように陰を愛し、光と陰として古来より取り入れてきたのが、和の様式である「屏風」や「障子」などのような歪みや捻じれのない平面です。日本らしい美しさを腕時計の外観に与えるべく考案されたセイコースタイルは、直線と平面を主体に構成されていながら、光と陰の間に尽きることなく多様な表情を生み出す構造を実現しました。

凛とした日本の美学と品格を体現する
珠玉のデザイン文法

セイコースタイルの主幹を成すのは、3つのデザイン方針です。ひとつ目は、「平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない」こと。柔らかい三次曲面を採り入れず、円錐形の一部から平面を作ることによって、面を構成しているので、極めてシャープな平面からなる造形です。光と陰が生み出すコントラストによって、表情のある輝きが生まれます。二つ目は、「ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって、極力平面部の面積を多くする」こと。視認性を上げるためのコントラストをよりアピールするために、ケースやダイヤルをはじめ、針にも直線が際立つ多面カットを施すなど、平面部を多く使っています。三つ目は、「各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは、極力歪みをなくす」こと。鏡面仕上げによって、光と陰のコントラストをより高めることで、高い視認性を備えながら、燦然と輝く腕時計を実現しています。

3つのデザイン方針をもとに編み出された9つのデザイン要素には、美の極致といえるディテールへのこだわりが凝縮されています。12時インデックスは、その他のインデックスの2倍の幅とし、12時位置を強調することで、時刻を読み取りやすくしています。インデックスと時分針には、視認性を上げ、より美しくきらめかせるために、多面カットを施し、それらをより際立たせるために、フラットダイヤルを採用しています。

ガラス縁上面とケース面には、「ザラツ研磨」を施し、歪みのない平滑な鏡面に磨き上げるとともに、平面と斜面のつなぎ目のエッジをしっかりと際立たせ、シャープな印象をつくり出しています。また、ケース側面やベゼル側面に逆斜面を入れることによって、美しい陰をつくり、表現のある輝きを演出するだけでなく、腕につけた時に、より薄さを感じられる形状になっています。りゅうずは、半ばケースに埋まるポジションに配することによって、ケースサイドに落ち着きをもたらすだけでなく、手首の太さに関わらず、心地良い装着感を実現しています。

歪みのないシャープな平面と直線を主体とした造形、歪みなく平滑に磨き上げられた鏡面、多面カットを施したインデックスや太い時分針。グランドセイコーの腕時計を象徴する数々のディテールを生み出した文法は、凛とした日本の美学と品格を体現するブランドの真髄として、現代のモデルに脈々と受け継がれています。

Principle 1

平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない。

Principle 2

ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって極力平面部の面積を多くする。

Principle 3

各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは極力歪みをなくす。

3つのデザイン方針をもとに定義された
9つのデザイン要素

セイコースタイルでは、日本人が愛おしむ「光」と「陰」の調和によって生まれる幾多のグラデーションが最も美しく現れる平面と直線を主体とした腕時計を体現するべく、3つのデザイン方針をもとに、9つのデザイン要素を独自に定義しています。

他のインデックスの2倍の幅
を持つ12時インデックス
2倍の幅を持つ12時インデックスにより、12時位置を強調することで、時刻を読み取りやすくしています。
多面カットのインデックス
多面カットを施したインデックスが、美しくきらめくとともに正確な時を知らせています。
半ば胴に埋めたりゅうず
半ば胴に埋まるポジションに収まったりゅうずは、手首が細くても太くても、心地よい装着感を得ることができます。
鏡面研磨されたガラス縁上面
歪みがなく平滑な鏡面は、ザラツ研磨によって平面の歪みをなくし、平面と斜面のつなぎ目のエッジをしっかりと際立たせています。
鏡面研磨されたケース平面
鏡面の平面が多い立体にすることで、硬く鋭い印象を作り出し、燦然と輝くケースを実現しています。
フラットダイヤル
フラットダイヤルは、インデックスと針、それぞれを際立たせるために徹底的に検証されたデザインです。
多面カットの太い時分針
時分針を多面カットにすることによって、針が美しくきらめくとともに高い視認性を確保しています。
接線サイドライン
接線サイドラインが大きな曲線を描くことで、造形の鋭い印象を和らげています。
逆斜面形状のベゼル側面と
ケース側面
逆斜面形状のベゼル側面とケース側面は、美しい影をつくり、表現ある輝きを演出します。また薄さを感じさせる形状にもなっています。
他のインデックスの2倍の幅 を持つ12時インデックス
2倍の幅を持つ12時インデックスにより、12時位置を強調することで、時刻を読み取りやすくしています。
多面カットのインデックス
多面カットを施したインデックスが、美しくきらめくとともに正確な時を知らせています。
半ば胴に埋めたりゅうず
半ば胴に埋まるポジションに収まったりゅうずは、手首が細くても太くても、心地よい装着感を得ることができます。
鏡面研磨されたガラス縁上面
歪みがなく平滑な鏡面は、ザラツ研磨によって平面の歪みをなくし、平面と斜面のつなぎ目のエッジをしっかりと際立たせています。
鏡面研磨されたケース平面
鏡面の平面が多い立体にすることで、硬く鋭い印象を作り出し、燦然と輝くケースを実現しています。
フラットダイヤル
フラットダイヤルは、インデックスと針、それぞれを際立たせるために徹底的に検証されたデザインです。
多面カットの太い時分針
時分針を多面カットにすることによって、針が美しくきらめくとともに高い視認性を確保しています。
接線サイドライン
接線サイドラインが大きな曲線を描くことで、造形の鋭い印象を和らげています。
逆斜面形状のベゼル側面と ケース側面
逆斜面形状のベゼル側面とケース側面は、美しい影をつくり、表現ある輝きを演出します。また薄さを感じさせる形状にもなっています。

1967

燦然と輝く時計を目指した
「セイコースタイル」を確立し、
日本の美を紡ぎ出した
高精度モデル「44GS」

卓越した匠の技に裏打ちされた傑作モデル

1967年に発売された「44GS」は、5振動の手巻時計として当時の最高精度を誇るとともに、日本ならではの美意識のもとに生まれたグランドセイコー独自のデザイン文法「セイコースタイル」を確立したモデルです。最たる特徴は、「ザラツ研磨」によって磨き上げた歪みのない平面と直線を主体としながら、逆傾斜になったケースサイドの面を稜線でつなげることによって、面と面が際立つシャープな造形美を実現していること。そこには、時に応じて、光と影が織り成す無数の陰影が生まれ、表現のある輝きを演出しています。この光と影の調和によって現れる幾多の表情こそが、日本人が思慕する美しさであり、グランドセイコーが重きを置く日本特有の美意識そのものです。それらを余すことなく体現した44GSは、日本の美を紡ぎ出したデザインといえる傑作モデルです。

1967年 44GS

第二精工舎が製造した初のグランドセイコーモデル。歪みなく磨き上げられたケースの鏡面は、まさに鏡のごとく、どこからでも美しく光を受けて燦然と輝く。

高度な職人技、経験に裏打ちされた
鋭い感性によって実現したセイコースタイル

平面と直線がせめぎ合う造形を実現させる上で重宝したのは、外装設計の寸法単位規格の変更でした。それまで時計業界の源流だった「リーニュ」という単位を使っていましたが、1961年に「ミリ」へと変更。最小単位が1/4リーニュ(約0.56mm)から0.1mmまで使用できるようになったことで、より繊細な外装設計を行うことを可能にしたのです。

その一方、優雅な弧を描く接線サイドラインや多面カットを施したインデックスや時分針など、セイコースタイルに基づくデザインを実現するためには、高度な職人技が不可欠でした。中でも、ガラス縁上面とケース面を歪みのない平滑な鏡面に磨き上げるザラツ研磨においては、回転する金属の円盤に貼りつけた専用の紙に、腕時計のパーツを押し当てて磨き上げる特殊技術はもちろんのこと、最終の仕上がりをイメージしながら、指先に伝わる熱や振動、研磨剤の減り具合などを調整する感性が求められます。修得するまでに、少なくとも10年を要するといわれる類稀なる匠の技は、円熟の粋に達した今もなお、さらなる高みを目指して発展を続けています。そして、グランドセイコーは、この「燦然と輝く腕時計」を起点として、さらなる発展を遂げていくことになります。

2013

伝統に「現代解釈」を加えて進化しながら日本の美を紡ぎ出す

「44GS」は、1967年に日本の美意識のもとに生まれたセイコースタイルを確立した最初のモデルです。2013年、この傑作モデルをベースに、実用性に沿って進化させた「44GS 現代デザイン」が誕生しました。このモデルは、耐衝撃性や耐磁性などの基本性能を高めながら、最大巻上時約3日間持続を可能にした「キャリバー9S65」を搭載。シースルー仕様の裏ぶたなど、現代のニーズにあわせたデザインに仕上げています。

2014年には、新開発のメカニカルハイビート36000GMT「キャリバー9S86」を搭載した44GS 現代デザインが誕生。インデックスと時分針には多面カットを施し、グランドセイコーらしい気品ある輝きとともに、高い視認性を確保しています。それらを際立たせるためにフラットダイヤルを採用。さらに、12時位置のインデックスは、他のインデックスの2倍の幅とし、 時刻を読み取りやすくするなど、ブランドの真髄を守るべく、可能なかぎり44GSを忠実に再現しながら、44GSに現代解釈を加えたデザインが特徴です。

2014年 SBGJ005

2014年 SBGJ005(キャリバー9S86)

SBGJ005は、金色に輝く陽極酸化処理した回転錘を搭載した特別仕様の数量限定モデルで、2014年度ジュネーブ時計グランプリ「プティット・エギュィーユ」部門賞を受賞。時計界のアカデミー賞と称される同グランプリは、世界の時計業界の1年を締めくくる祭典。国際色豊かな時計スペシャリストで構成された複数名の審査員により、毎年優れたクリエイションや技術への表彰を行っている(画像は通常仕様のムーブメント)。

「現代へのアップデート」という
新たな進化を遂げた美しいデザイン

2013年に登場した44GS 現代デザインにおいて、新たな解釈が加えられたのはケースサイドの造形です。本来セイコースタイル「平面を主体として、平面と二次曲面からなる」ことをデザイン方針のひとつに定義しているため、その造形は直線的になっていましたが、時代とともに、防水性や耐久性の向上などを目的に外装の設計思想は変化してきました。その上で、より心地よい装着感を実現するために「ザラツ研磨」がもたらす歪みのない平滑な鏡面を44GSと同じく多用しながら、ケースサイドの稜線にゆるやかなカーブをもたせ腕なじみの良いラインを構成しました。これは、セイコースタイルが44GSによって確立された1967年から、ザラツ研磨の研鑽を重ね、その技術にさらに磨きをかけた匠の技があったからこそ実現できた造形です。44GSが実現した、光と陰の間に生まれる幾多の美しい表情を生み出す構造を受け継いだこのモデルは、どこからでも美しく光を受けて燦然と輝きながら、現代へのアップデートという進化を遂げ日本の美を紡ぎ出しています。

ケースサイドの造形が直線的な「44GS」に対し、「44GS 現代デザイン」では、ケースサイドの稜線にカーブをもたせることで、より心地よい装着感を実現した。(左:44GS(1967年発売)右:44GS 現代デザイン)