グランドセイコー、 美し「時を伝える腕時計

Vol.1 日本ならではの美意識が、 ミラノを沸かせた。

THE NATURE OF TIME

時をテーマにした、
新進クリエイターのアプローチ

テレビCMやCIデザイン、ミュージックビデオなどのディレクターも行う、CGディレクターの阿部伸吾。今回は映像作品「movement」を手がけた。

製品が生まれる場所、
長野県塩尻で感じた驚き。

「FLUX」を手がけたwe+は今回のプロジェクトを前に、長野県塩尻市に出向きました。スプリングドライブ・ムーブメントをもつグランドセイコーが生まれる場所を見るのが目的です。

「まずは哲学を理解したかった。グランドセイコーは精緻につくられた時計ですが、手仕事も大切にしている。つくり込みの限界に挑戦しているのです。製品が生み出される現場を目にして、“技術”と“感性”のバランスが取れた時計であることを理解できました。塩尻で感じたこの驚きが、インスタレーションへと結びついた。もちろん技術も凄いのですが、ここまで突き詰めてつくっているのだという驚きを伝えたかったのです」と林登志也さん。

we+(ウィープラス)は林登志也(写真右)と安藤北斗(写真左)により、2013年に設立したコンテンポラリーデザインスタジオ。国内外で作品を発表している。

移ろいゆく時を
カタチにするために。

しかしその道のりは、容易ではありませんでした。

「多くのブランドが参加するミラノ・デザインウィークで、際立った存在になるにはどうするべきか。そこで注目したのが発光パウダーでした。時間の経過とともに光は減衰する。つまり“時間軸を絡めた素材”なのです。この素材を流体にして台の上に満たし、少しずつ動かしています。発光する光の輪が少しずつ暗くなり、形が崩れていくことで移ろいゆく時を表現しました。来場者には『日本的な表現だね』と言われましたね。要素を絞り込んでていねいに情景を切り取っていくと、必然的に“日本的”に見えてくるのでしょう」と安藤北斗さん。

この静かなインスタレーションの前では、誰もが言葉を失う。多くの人が足を止め、流れる時を感じ取っていくのです。

今回の会場は、貴族ポルディ・ペッツォーリ家が蒐集した絵画や工芸コレクションを公開するための邸宅美術館。セイコーの創業年と同じく、1881年に開館した。

情緒的、感性的な価値を表現する。
表現する。

時計ブランドのインスタレーションですが、展示される時計は1本のみ。ここにも理由があります。

「機能的な価値を知らせるのならスペックシートがあればいい。各国の言語でつくれば、間違いなく伝わります。しかし情緒的な価値に言葉はいりません。だから時計を象徴的に使う。機能を見せるのではなく、グランドセイコーやスプリングドライブの世界観を伝えることが求められているのです」と林登志也さん。

情緒的、感性的な価値はたくさんの情報を並べても伝わりません。目に見えるものを説明するのではなく、目に見えないものを表現する。それは時間という見えない概念を、美しい時計というカタチで表現しているグランドセイコーの本質を語る上で、最も自然な方法なのかもしれません。