30年後の潤滑油。

キャリバー9F
写真の初代グランドセイコーをはじめ多くの機械式ムーブメントを徹底的に研究し、“クオーツを超えるクオーツ”キャリバー9Fは誕生した。

30年後の潤滑油。

写真の初代グランドセイコーをはじめ多くの機械式ムーブメントを徹底的に研究し、“クオーツを超えるクオーツ”キャリバー9Fは誕生した。

永く愛されるために、必要なこと。

油断大敵とは、寺院で法灯を絶やさぬため、油を切らすべからずという戒めがその語源だという。油切れに注意すべきは腕時計も同じだ。潤滑油が切れると部品の磨耗が進み、故障の原因になる。機械式だろうがクオーツだろうが、長期間使用するなら、アナログ式の時計に共通するメンテナンスの要である。

ある時、裏ぶたが開けられた形跡がない初代グランドセイコーの内部に約30年前の潤滑油が保たれていたという話が、キャリバー9Fの開発陣の耳に入った。その腕時計がどれほどの歳月、稼働したのかは不明だが、油が残っていた理由については想像することができた。

クオーツは機械式と比較すると、歯車にかかる力が小さいため特別な保油機構は必要ないと考えられていた。しかしキャリバー9Fの開発陣は、その耐久性を極限まで高めたかった。そのため機械式ムーブメントに採用されていた、潤滑油の飛散、流失を防ぐ保油機構についてリサーチしていたのである。その結果、キャリバー9Fではローターの軸の先端「ほぞ」をスプリングとふたつの微細なルビー、その間に満たした潤滑油で守り支える機構が必須という結論を得た。

こうして、それまでのクオーツムーブメントにはなかった「組み合わせ軸受け」が採用される。キャリバー9Fは、年差を誇る高精度クオーツムーブメントであるだけではなく、人生の同伴者として永く愛用されるべきグランドセイコーのムーブメントだからである。

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