【グランドセイコー、未来へ紡ぐ10の物語】 Vol.9 時を切り取るスポーツウオッチへ、
伝統は受け継がれた。

CHRONOGRAPH クロノグラフを開発し、さらなる高みを目指す。

機械式腕時計の高級化にともなって、2000年代はトゥールビヨンや永久カレンダーといった複雑な付加機構への注目も高まった。グランドセイコーでは“正確で見やすく美しい”ことが重視され、複雑な付加機能はいわば“遊び”の部分である。しかしそういった余剰が腕時計に深みを与えるのも事実で、無用に思えるが実は大切な役割を果たしている“無用の用”の価値も取り入れるべきではないか? そういった意見が社内からもあがってきた。

では、グランドセイコーが領域を拡大していく上で、最も適した機構は何だろう。そこで浮上したのがクロノグラフだった。セイコーは1964年の東京オリンピックを皮切りに、72年の冬季札幌大会、92年のバルセロナ大会など、計6大会でオリンピック公式計時を担当。そのために必要なのが高度な技術力やマネージメント力なのだ。セイコーはその高い技術力でクロノグラフ機構を開発。69年には世界初の日付・曜日付きの自動巻クロノグラフ「セイコーファイブスポーツ スピードタイマー」を発売する。この年はクロノグラフ機能の歴史的転換期であり、スイスブランドからも自動巻式クロノグラフの発表が相次いだ。セイコーは自動巻クロノグラフに、技術的に困難と言われていた日付・曜日表示もつけて販売した。しかもこの自動巻式クロノグラフに搭載していたCal.6139は、クロノグラフ機構へ動力を伝達する手段として、皿ばねを使った垂直クラッチ方式を採用。この方式は計測スタート時の針飛びがないため、現在でも多くのクロノグラフが採用している。

こうした歴史をもつセイコーが、最高峰のグランドセイコーにクロノグラフを取り入れるのは当然だろう。しかしグランドセイコーである以上は、精度、操作性、視認性のすべてに妥協は許されない。ムーブメントだけでなく、ケースやダイヤルも最高品質を目指すことが至上命題であるなかで、複雑機構であるクロノグラフを実現できるのだろうか? 社内でも意見は割れた。

しかし時を計測するという機能も、腕時計の存在意義の一つであることは明白。そこに挑戦するのが、“腕時計の原点と頂点を同時に究める” ことを目指してきたグランドセイコーの役目ではないか。そうした声に応えてついにクロノグラフモデルの開発が始まった。

CHRONOGRAPH クロノグラフを開発し、
さらなる高みを目指す。

機械式腕時計の高級化にともなって、2000年代はトゥールビヨンや永久カレンダーといった複雑な付加機構への注目も高まった。グランドセイコーでは“正確で見やすく美しい”ことが重視され、複雑な付加機能はいわば“遊び”の部分である。しかしそういった余剰が腕時計に深みを与えるのも事実で、無用に思えるが実は大切な役割を果たしている“無用の用”の価値も取り入れるべきではないか? そういった意見が社内からもあがってきた。

では、グランドセイコーが領域を拡大していく上で、最も適した機構は何だろう。そこで浮上したのがクロノグラフだった。セイコーは1964年の東京オリンピックを皮切りに、72年の冬季札幌大会、92年のバルセロナ大会など、計6大会でオリンピック公式計時を担当。そのために必要なのが高度な技術力やマネージメント力なのだ。セイコーはその高い技術力でクロノグラフ機構を開発。69年には世界初の日付・曜日付きの自動巻クロノグラフ「セイコーファイブスポーツ スピードタイマー」を発売する。この年はクロノグラフ機能の歴史的転換期であり、スイスブランドからも自動巻式クロノグラフの発表が相次いだ。セイコーは自動巻クロノグラフに、技術的に困難と言われていた日付・曜日表示もつけて販売した。しかもこの自動巻式クロノグラフに搭載していたCal.6139は、クロノグラフ機構へ動力を伝達する手段として、皿ばねを使った垂直クラッチ方式を採用。この方式は計測スタート時の針飛びがないため、現在でも多くのクロノグラフが採用している。

こうした歴史をもつセイコーが、最高峰のグランドセイコーにクロノグラフを取り入れるのは当然だろう。しかしグランドセイコーである以上は、精度、操作性、視認性のすべてに妥協は許されない。ムーブメントだけでなく、ケースやダイヤルも最高品質を目指すことが至上命題であるなかで、複雑機構であるクロノグラフを実現できるのだろうか? 社内でも意見は割れた。

しかし時を計測するという機能も、腕時計の存在意義の一つであることは明白。そこに挑戦するのが、“腕時計の原点と頂点を同時に究める” ことを目指してきたグランドセイコーの役目ではないか。そうした声に応えてついにクロノグラフモデルの開発が始まった。

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「SBGA011」と「SBGL001」 「SBGA011」と「SBGL001」

左:1969年5月に発売された「セイコーファイブ スポーツ スピードタイマー」は、世界初の日付・曜日付きの自動巻クロノグラフ。搭載するムーブメントはCal.6139
右:2007年発売のグランドセイコー「SBGC003」。スプリングドライブクロノグラフムーブメントCal.9R86 を搭載。文字板の3時側に縦配列された30分計と12時間計により判読性が向上した。

セイコーの遺伝子を継承し、
「スポーツ」という新たな領域へ。

1964年開催の東京オリンピックで使用された、機械式の1/10秒計測ストップウオッチ。スプリングドライブクロノグラフCal.9R86の開発では、このストップウオッチのボタンの押し感を徹底的に研究した。

スプリングドライブクロノグラフ
Cal.9R86 垂直クラッチ部

スプリングドライブクロノグラフ
Cal.9R86 垂直クラッチ部

クロノグラフを動かす動力は基本時計の動力と同じ。スタートボタンを押すことでクロノグラフ機構へと動力を伝える仕組みだ。セイコーでは1969年にCal.6139にて皿ばねを使った垂直クラッチ方式を考案。動力伝達時の針飛びをなくし、高精度な計測が可能に。スプリングドライブクロノグラフでも、この機構をさらに改良して採用した。

※本ページに掲載している時計の写真は、一部、発売時の仕様とは異なるものがあります。