【グランドセイコー、未来へ紡ぐ10の物語】 Vol.6 技術者たちの理想を叶えた、
腕時計の未来形。

DREAM 究極の技術から生まれた、新世代ムーブメント。

1969年の「セイコー クオーツ アストロン」によってクオーツ式ウオッチが実用化された。77年にはセイコーはソーラー式のアナログウオッチも発売。90年にはドイツで電波腕時計が生まれた。しかし高精度技術は電池や光、電波などの“外部要因”に依存し、腕時計技術として完璧とは言いにくい。セイコーが理想とする究極の腕時計技術とは、ほかに頼らずに高精度を実現すること。そこで考えられたのが“機械式ムーブメントをクオーツ回路で制御する”という技術だった。

セイコーエプソンは78年にこの技術の特許を出願したが、実用化は困難を極めた。機械式の動力伝達で発電し、その電力でクオーツ回路を動かすには、発電効率を高めると同時にICの消費電力を減らさなくてはいけない。スイス時計業界もこの技術に注目し、90年代後半以降は、研究開発が急ピッチで進んだ。

“スプリングドライブ”と命名された新世代ムーブメントは、手巻式で巻き上げたぜんまいがほどける力で歯車を回すのは機械式と同じだが、その際に発電して水晶振動子とICを駆動させ、歯車が回転する速度をコントロールするというメカニズム。商品化されたのは99年だが、この画期的なムーブメントは「セイコー」と「クレドール」の2ブランドで発売された。当時のグランドセイコーは、圧倒的な高精度と革新的な新機軸を武器としたクオーツ式と復活したばかりの機械式の二本柱に力を入れていたからだ。

99年当時、セイコーの高級腕時計といえばクレドールだったが、“ぜんまい駆動でありながら機械式を超える高精度”という技術的な優位性や、ライバルであるスイス腕時計にはない独自性が一部のユーザーの心を捉えた。こうした中で、開発中だった自動巻式スプリングドライブムーブメントをグランドセイコーに搭載することが決定した。9Fクオーツがクオーツ技術の完成形であり、9Sメカを伝統技術の究極形と考えるならば、自動巻式の9Rスリングドライブは、グランドセイコーにとって“独創の方式への挑戦”といえるだろう。

腕の動きでぜんまいを巻き上げ、その力で発電し、クオーツ回路を使って正確に歯車の回転速度を制御して針を回すというメカニズムは、ほかには頼らない“自己完結”の高精度ムーブメントである。それは身に着ける者にとっての信頼の証であり、深い愛着にもつながるだろう。このスプリングドライブは腕時計技術が進化してたどり着くことができた、現代における“夢の腕時計”だったのだ。

DREAM 究極の技術から生まれた、
新世代ムーブメント。

1969年の「セイコー クオーツ アストロン」によってクオーツ式ウオッチが実用化された。77年にはセイコーはソーラー式のアナログウオッチも発売。90年にはドイツで電波腕時計が生まれた。しかし高精度技術は電池や光、電波などの“外部要因”に依存し、腕時計技術として完璧とは言いにくい。セイコーが理想とする究極の腕時計技術とは、ほかに頼らずに高精度を実現すること。そこで考えられたのが“機械式ムーブメントをクオーツ回路で制御する”という技術だった。

セイコーエプソンは78年にこの技術の特許を出願したが、実用化は困難を極めた。機械式の動力伝達で発電し、その電力でクオーツ回路を動かすには、発電効率を高めると同時にICの消費電力を減らさなくてはいけない。スイス時計業界もこの技術に注目し、90年代後半以降は、研究開発が急ピッチで進んだ。

“スプリングドライブ”と命名された新世代ムーブメントは、手巻式で巻き上げたぜんまいがほどける力で歯車を回すのは機械式と同じだが、その際に発電して水晶振動子とICを駆動させ、歯車が回転する速度をコントロールするというメカニズム。商品化されたのは99年だが、この画期的なムーブメントは「セイコー」と「クレドール」の2ブランドで発売された。当時のグランドセイコーは、圧倒的な高精度と革新的な新機軸を武器としたクオーツ式と復活したばかりの機械式の二本柱に力を入れていたからだ。

99年当時、セイコーの高級腕時計といえばクレドールだったが、“ぜんまい駆動でありながら機械式を超える高精度”という技術的な優位性や、ライバルであるスイス腕時計にはない独自性が一部のユーザーの心を捉えた。こうした中で、開発中だった自動巻式スプリングドライブムーブメントをグランドセイコーに搭載することが決定した。9Fクオーツがクオーツ技術の完成形であり、9Sメカを伝統技術の究極形と考えるならば、自動巻式の9Rスリングドライブは、グランドセイコーにとって“独創の方式への挑戦”といえるだろう。

腕の動きでぜんまいを巻き上げ、その力で発電し、クオーツ回路を使って正確に歯車の回転速度を制御して針を回すというメカニズムは、ほかには頼らない“自己完結”の高精度ムーブメントである。それは身に着ける者にとっての信頼の証であり、深い愛着にもつながるだろう。このスプリングドライブは腕時計技術が進化してたどり着くことができた、現代における“夢の腕時計”だったのだ。

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「クレドール クロノメーター パワーリザーブ」と「SBGR001」 「クレドール クロノメーター パワーリザーブ」と「SBGR001」

左は、1999年に誕生した世界初のスプリングドライブウオッチで、手巻式のCal.7R68を搭載。セイコーブランドで発売され、パワーリザーブ表示は10時位置に。右は、2004年に誕生した初のスプリングドライブ式グランドセイコー。自動巻式へと進化し、72時間持続を実現したCal.9R65を搭載。

1982年 手巻スプリングドライブ 第一次サンプル

1982年
手巻スプリングドライブ
第一次サンプル

第一次開発は、セイコーエプソンと某国立大学との共同研究。既存の機械式ムーブメントの脱進機まわりに電子パーツを組み込み、歯車の回転を制御。消費電力が大きく、発電効率も悪いため、3時間程度しか駆動しなかった。

1993年 手巻スプリングドライブ 第ニ次サンプル

1993年
手巻スプリングドライブ
第ニ次サンプル

セイコーエプソンと当時のセイコー電子工業との共同開発。機械式ムーブメントを改良し、巨大なコイルを積み込んだ。電子回路も小型化する必要があり、パワーリザーブも約10時間程度で、実用化には至らず。

1999年 手巻スプリングドライブ

1999年 手巻スプリングドライブ

1999年に完成したCal.7R68。当時は「新世紀メカニズム」という呼び名を用いた。表面に美しい仕上げを施し、シースルーバックから鑑賞できるようにしていた。このムーブメントはセイコーブランドの腕時計に搭載。

1982年 手巻スプリングドライブ
第一次サンプル

1982年 手巻スプリングドライブ 第一次サンプル

第一次開発は、セイコーエプソンと某国立大学との共同研究。既存の機械式ムーブメントの脱進機まわりに電子パーツを組み込み、歯車の回転を制御。消費電力が大きく、発電効率も悪いため、3時間程度しか駆動しなかった。

1993年 手巻スプリングドライブ
第ニ次サンプル

1993年 手巻スプリングドライブ 第ニ次サンプル

セイコーエプソンと当時のセイコー電子工業との共同開発。機械式ムーブメントを改良し、巨大なコイルを積み込んだ。電子回路も小型化する必要があり、パワーリザーブも約10時間程度で、実用化には至らず。

1999年 手巻スプリングドライブ

1999年 手巻スプリングドライブ

1999年に完成したCal.7R68。当時は「新世紀メカニズム」という呼び名を用いた。表面に美しい仕上げを施し、シースルーバックから鑑賞できるようにしていた。このムーブメントはセイコーブランドの腕時計に搭載。

COLUMN

2004年には
自動巻スプリングドライブが登場。

実用性に優れる自動巻式のスプリングドライブは、1998 年に開発をスタート。2002年にグランドセイコーへの投入が決定し、要求される技術水準が格段にアップした。03年に最終版が完成。04年9月にグランドセイコー専用ムーブメントとして搭載される。

自動巻スプリングドライブ 自動巻スプリングドライブ
※本ページに掲載している時計の写真は、一部、発売時の仕様とは異なるものがあります。