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Produced by GQ JAPAN for Grand Seiko

2021.07.09.FRI

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エッセンス・オブ・グランドセイコー Vol.2

今のグランドセイコーにしか作り得ない、新世代のドレスウオッチ
──エレガンスコレクション「SBGY007」

SBGY007

▲グランドセイコー エレガンスコレクション SBGY007 ステンレススチールケース×クロコダイルストラップ、手巻スプリングドライブ、ケース径38.5mm、93万5000円(税込)。

グランドセイコーの「エレガンスコレクション」は、ダイヤモンド入り、日付なし、あるいはスモールセコンドを備えるなど、ドレスウオッチ的な要素を強調したコレクションである。中でも、2021年のエレガンスコレクションの新作「SBGY007」は際立ってユニークだ。

  • Words: 広田雅将 Masayuki Hirota
  • Photos: 星 武志 Takeshi Hoshi @ estrellas
  • Styling: 石川英治 Eiji Ishikawa @ T.R.S

よりドレッシーになったグランドセイコー

よりドレッシーになったグランドセイコー

▲真冬の諏訪湖でしばしば見られるのが、せり上がった氷が筋道となる「御神渡り」だ。SBGY007は、その情景をダイヤルに繊細な水色を添えて再現してみせた。今のグランドセイコーにしか作れない、非常に凝ったダイヤルだ。93万5000円。写真は、湖面の氷に亀裂が入り山脈状にせりあがった御神渡り=長野県諏訪市側の諏訪湖畔(写真:毎日新聞社/アフロ)。

1967年の通称44GS以降、明確なデザインコードを与えられてきたグランドセイコー。ケースサイドとラグを一体化させたサイドラインや、裏ぶたに向けてケースを絞った逆斜面などは、スイスの腕時計とは明らかに違う造形をグランドセイコーにもたらした。それから半世紀。ディテールは時代によって変わってきたが、大胆な面構成や、大きく絞り込んだ側面といった要素は何ひとつ変わっていない。そんなグランドセイコーにあって、独自の方向性をもつのが「エレガンスコレクション」である。

名前が示すとおり、エレガンスコレクションは、グランドセイコーのいわばドレスラインにあたる。つまりグランドセイコーならではの実用性や上質さだけでなく、薄さや、宝飾的な価値を追求したもの、と言えるだろう。そんなエレガンスコレクションにあって、もっとも野心的な試みのひとつが、SBGY007だ。

ラグの上面を限りなく大きく取ったデザインは、なるほどグランドセイコーならではだ。しかし、ベゼルや針、そしてインデックスを細く絞ることによって、このモデルは、今までのグランドセイコーとはひと味違う線の細さを得た。とはいえ、針とインデックスの厚みを強調することによって、視認性はまったく損ねていない。

ケースの厚さはわずか10.2mm

ケースの厚さはわずか10.2mm

▲「THE NATURE OF TIME」をブランドフィロソフィーに掲げるグランドセイコー。デザインモチーフに自然を選ぶようになったのは当然だろう。普通は、腕時計に採用しにくい自然の模様。それを採用しただけでなく、実用性と両立させた点に、グランドセイコーのユニークさがある。

このモデルが「エレガンス」である理由は、まずケースの厚みだ。ムーブメントにはあえて手巻スプリングドライブのキャリバー9R31を採用。加えて、ケーシングに工夫をこらすことによって、ケースの厚みをわずか10.2mmに留めたのである。頑強さを求めるグランドセイコーは、総じてケースに重厚感がある。しかし、本作では、エレガンスコレクションの名にふさわしく、薄いケースを採用したのである。しかも、グランドセイコーの頑強さを損ねることなく、だ。もちろん、ケースの磨きもグランドセイコーの名に恥じないものだ。複雑な曲面に、歪みなく鏡面仕上げを施してある。

搭載するキャリバー9R31も、普通のグランドセイコーとはひと味違う。ムーブメントの受は、上面が筋目仕上げとなった。また、受の面取りも、高級機よろしくエッジが鏡面仕上げになっている。このモデルを製造するのは、長野県塩尻に所在する「信州 時の匠工房」という、高度な製造技術を有する製造部門である。グランドセイコーは本作を、明らかにドレスウオッチに寄せた高級機として仕立てたのであって、その証拠に、グランドセイコーではおなじみの日付表示はあえて省略された。

視認性とユニークさの両立、「御神渡り」ダイヤル

視認性とユニークさの両立、「御神渡り」ダイヤル

▲明らかにドレスウオッチを意識した構成をもつ、SBGY007。ケースサイズも、直径38.5mm、厚さ10.2mmと小ぶりに仕立てられた。また、ラグを短く切ってあるため、腕時計の全長も短い。あえて大きなりゅうずを与えたのは、実用性を重視するグランドセイコーらしい。

もちろん、グランドセイコーらしいユニークさは本作でもより強調された。ダイヤルに採用されたのは、諏訪湖で見られる「御神渡り(おみわたり)」に触発された、まったく新しい模様だ。塩尻事業所の近くにある諏訪湖では、真冬になると湖が氷結し、寒暖差によって氷がせり上がる。その筋道で吉兆を占うのが、御神渡りだ。本作のダイヤルは、氷の模様をプレスで巧みに表現したものである。

プレスでダイヤルに模様を付けるのは、スイスのメーカーでもやっている。しかし、もっとも完成度が高いのはグランドセイコーのプレス模様だ。普通、模様が大きくなるとどうしても視認性が悪くなってしまう。そのため多くのメーカーは、あえて小さな模様を選びたがる。対してグランドセイコーは、プレスの技術を磨くことによって、存在感のあるパターンと高い視認性を両立してみせた。

それを可能にしたのが、ダイヤルの表面に吹かれた厚いラッカーだ。深く打ち込んだ模様の上に、厚くラッカーを施し、丁寧に研ぎ上げていく。厚く吹かれたラッカーは、ダイヤルを平滑にし、視認性を高める効果をもたらしたのである。しかもそのダイヤルを、薄いケースに収めたのが、このモデルのすごみなのである。普通、これほど凝ったダイヤルは、薄いケースには採用するのは難しい。しかし、あえて載せたところに、今のグランドセイコーの力量がある、と言えるだろう。

一見オーソドックスなパッケージに、新しい試みを盛り込んだSBGY007。これは、今のグランドセイコーにしか作り得ない、新世代のドレスウオッチなのである。

  • SBGY007

    ▲グランドセイコーのお家芸の見せ所が、プレスで施した複雑な模様をもつダイヤル。職人が数種類のハンマーを使って金型を整形することによって、大胆なパターンと、緻密なディテールを両立させた。

  • SBGY007

    ▲ダイヤルの12時位置。地に複雑なパターンをもつにも関わらず、視認性は優秀だ。インデックスを高く整形することによって、ダイヤルとのコントラストを強調している。また、表面に厚くラッカーを吹いて、表面を平滑に仕上げている。

  • SBGY007

    ▲高級機ならではのディテールが、先端を曲げた分・秒針である。他社にも先端を曲げた針は少なくない。しかし、グランドセイコーが採用する、厚みのある針を曲げるのは非常に難しい。この価格帯では随一と言ってよいほど、コストの掛かった針だ。

  • SBGY007

    ▲秒針も同様に先端を曲げている。なお、グランドセイコーの採用する青針は、メッキや塗装ではなく、鋼を加熱して着色したもの。職人がひとつひとつ焼いて色をつけていく。

  • SBGY007

    ▲薄さを強調したSBGY007。しかし、グランドセイコーの個性である立体感も盛り込まれた。多くの薄型腕時計は、薄くみせるため、ガラスのカーブとベゼルの曲面を揃えようとする。しかし本作では、あえて段差を強調して、ありきたりの薄型腕時計とは違う造形を得た。

  • SBGY007

    ▲グランドセイコーのデザインコードが、細く絞ったケースサイドと、裏ぶた側に向けてつけられた強い斜面だ。本作も例外ではなく、側面はギリギリまで絞られたほか、裏ぶた側への絞りも強調された。そのいっぽうで、使い勝手のために、りゅうずは大きくされ、ラグも短く切られた。

  • SBGY007

    ▲このモデルを動かすのが、手巻スプリングドライブのキャリバー9R31だ。約72時間という長いパワーリザーブと、高級機らしい緻密な仕上げをもつ。注目したいのが、受の上面に施された強い筋目仕上げ。広い面積にムラなく筋目を施すのは、簡単なように見えてかなり難しい。

  • SBGY007

    ▲SBGY007はバックルも上質だ。部品同士の精密な噛み合わせはいかにも高級機。また、細腕の人でも着けられるよう、バックルは短く仕立てられた。グランドセイコーらしい配慮が、外れにくくするための開閉用のプッシュボタン。

  • SBGY007

    ▲デザインの妙を示すのが、ラグの造形だ。短く切ったラグがそう見えないのは、落差を大きく取っているため。また、先端を大きく丸めることによって、立体感を強調している。グランドセイコーの個性である磨きの良さは、ラグの上面を見れば明らかだ。

  • SBGY007

    ▲グランドセイコーらしさを残しつつも、薄さを盛り込んだSBGY007。93万5000円。

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