GS Grand Seiko

PRODUCT STORY 2“ザラツ”と“筋目”、
引き立て合う二つの技。

工程ごとに研磨の出来がチェックされるが、修正の指示がないものを「一発良品」と彼らは呼ぶ。卓越した腕前を獲得した研磨の名人たちに共通するのは、負けず嫌いで修業時代から「一発良品」にこだわり、自己研鑽を積み重ねていくことだという。

ザラツと並んで難しいハンドワークは「筋目つけ」である。グランドセイコーのケースには鏡面だけでなく、筋目(ヘアライン)仕上げを取り入れたモデルも多い。精緻な筋目は、煌めく鏡面とは対照的に、落ち着きのある柔らかな表情をもたらす。筋目があるから鏡面が引き立ち、鏡面があるから筋目が引き立つのだ。この筋目は、ケースを「ザラツ」と「仕上げバフ」で鏡面に磨き上げてからつけられる。どうせ筋目をつけるのに、なぜザラツをしなければならないのか?

鏡面と筋目の境界線であるシャープな稜線は、ザラツ工程があってこそ。

ケース工房で筋目つけのスペシャリストである牛山貴博は言う。「面に少しでも歪みがあると筋目にムラができてしまうからです」。ケースの研磨で最後の工程である筋目つけは、粒度400〜800の研磨紙を金属板に貼り、そこにケースを押し当てスライドさせていく。力加減、スライドさせる速度が違えば異なる筋目になってしまう。平面であれば一度押し当てて左右に動かすが、曲面の場合は手首をひねる動きも必要になる。深すぎる筋目は修正することもできない。部分によっては棒の先に研磨紙をつけ、それでヘアラインをつけることもある。その困難な仕上げを担当する牛山は「自分たちの仕事は、時計店やデパートのショーケースで直接、お客様の目に触れる。それが嬉しいし、だからこそ気が抜けないです」と言う。

かつてセイコースタイルは、グランドセイコーという腕時計をムーブメントの精度だけでなく、その存在そのものを輝かせるために生まれた。そしてこのスタイルを進化させる力は、半世紀たった今でもデザインの意志とクラフトマンの技なのである。

「筋目つけ」が施されたかん足。緻密で均一なヘアラインが走っている。