GS Grand Seiko

PRODUCT STORY 2優れた腕時計を生み出し、
技術を進化させるもの。

「目の前のムーブメントの内部でひとつひとつのパーツの動きがイメージできるようになってくるんですね。私の最初の上司は天才的なところがある人でしたが、それができるようになってからは、その人の背中に少し近づけたのかな、と思えるようになってきました」。村山の最初の上司とは現在セイコーエプソンのマイクロアーティスト工房に所属する中田克美で「現代の名工」と「黄綬褒章」を受賞した、日本を代表する時計師のひとりである。

村山だけでなく相馬も鷲美も、工房での仕事に限らず、百貨店や時計店で催されるグランドセイコーのイベントに出向き、ムーブメントの組み立てを実演する機会も多い。「自分がつくっている腕時計がどんな腕時計であるか、なにを目指している腕時計なのか、もちろん知っていたつもりなのですが、お客様とお話しさせていただくと、グランドセイコーがどのように大切にされ愛されているのかを改めて実感します」と村山はいう。そして、そのような腕時計づくりに携わっている喜びだけではなく、それ以上に身が引き締まるような気持ちを感ずるという。

顕微鏡越しに一点を凝視するため、視力の低下は時計師共通の悩み。組み立ての際、パーツには少しの傷もつけられないため、その瞬間は呼吸を止めて、ピンセットの先端に神経を集中させる。

スプリングドライブは革新と最先端のムーブメントであり、時計師の熟練の技がなければつくることができないムーブメントでもある。そしてその熟練の技を磨くのは、技術の理解、知識の伝承や根気だけでない。より優れたモノを自分の手でつくり、生命を与えたいという熱意。そしてこの腕時計を選び愛してくれる人がいるという確信。時計師の内にあるこれらの意思が、ひとりひとりの創意を生み出し、技を進化させていくのだろう。スプリングドライブというムーブメントは、「匠がつくるムーブメント」であると同時に「匠を育てるムーブメント」でもあるかもしれない。

直径数㎜の歯車を組んでいく。要となるピンセットは自分で磨き加工する。