GS Grand Seiko

PRODUCT STORY 2蓄積してきた技術の結晶、
そして次のステージへ。

スプリングドライブ開発の重要な鍵であった、画期的な低電圧ICを小池たちが手に入れることができたのは、逆説的に言えば、60年代にクオーツ時計の超小型低電圧ICを設計・製造してくれる半導体メーカーが他になかったからだとも言える。クオーツ時計を製造するにあたり、ICも自社開発しなければならず、そのことが結果的にセイコーエプソンを半導体メーカーとして成長させた要因でもある。長年の研究開発による技術の蓄積があったからこそ、スプリングドライブのために専用の低電圧ICをつくることができたのだ。その試作ICを初めて組み込んだのは97年12月26日。正確に動く針を確認した回路設計の技術者たちは、互いの顔を見合わせた。小池は「あの時は感動というより、おかしな話ですが、『あ、本当に動いた』という驚きでした」と語る。やがて、その試作ムーブメントが行方不明になる「事件」も起きた。開発担当の高橋は言う。「赤羽さんが自分の机の引き出しにしまっていたことが後でわかりました」。それを時折取り出しては、自分の手のひらにのせたであろう赤羽はなにを思っただろう。しかし、99年の製品化、2004年のキャリバー9Rの開発を待たずに、赤羽は肺炎が原因で急逝してしまう。98年8月のことだった。

グランドセイコー用スプリングドライブとして、自動巻機構を用い、72時間駆動を達成した2003年の試作機。その開発にも数々の試練が待ち受けていた。

その後、スプリングドライブの開発チームは製品化に向けて奮闘すると同時に、自動巻の開発にも着手。画期的な機構であるスプリングドライブを、グランドセイコーに搭載するにふさわしいムーブメントへ磨き上げていくために、なにが必要か。機械式時計の技術とクオーツ時計の技術、その集大成とも言えるスプリングドライブの進化の物語は続く。