Vol.5

薄型化と低重心化による優れた装着性

1960年の初代モデル以来今日まで、グランドセイコーは高精度、高い視認性、美しさ、優れた耐久性を追求してきました。そして、それらに加えて、快適な着け心地の実現も目指してきました。

ケースの直径や厚さだけでなく、かん足の長さやケースのカーブ形状といった要素によっても時計を腕に着けたときの感覚は変わります。そのため、グランドセイコーのデザインは心地よい装着感を実現するために細部まで考え抜かれています。
さらに、使用する素材も装着感に影響を与えます。ケースとブレスレットにブライトチタンを使うと、ステンレススチールを使った時に比べて時計の重さを30%以上軽くすることができます。9Rスプリングドライブ初のブライトチタンモデルは、9R誕生の年の2004年に登場しました。それは「樅の木パターン」の文字盤を持つ限定モデルSBGA005。当時は高級時計にチタン素材を採用することは現在ほどには見られませんでしたが、グランドセイコーはより快適な装着感を求めてこの素材を採用しました。その翌年、「雪白パターン」文字盤として知られるSBGA011が発売されました。これは北アルプスの穂高連峰に積もった雪をイメージした白い文字盤が特徴的なモデルですが、ブライトチタン製のケースやブレスレットのおかげで、軽快で心地よい装着性も実現しています。

搭載するムーブメントの大きさは腕時計のサイズに影響を与え、そして装着感を左右します。グランドセイコー エボリューション9コレクションSLGA021に搭載されるキャリバー9RA2は、性能において大きな進化を遂げています。5日間のロングパワーリザーブと平均月差±10秒という超高精度スペックに加え、薄型化も実現しました。キャリバー9R65の厚さが5.8mmであるのに対し、キャリバー9RA2の厚さは5.0mmです。これによりSLGA021はケースの厚さ11.8mmという薄型化を実現しました。

しかし、SLGA021の薄型ケースはムーブメントの薄型化だけによって実現したものではありません。針と針の間隔を狭くすることでケース全体の厚さを抑えました。これはさらに、視認性の向上にもつながっています。

エボリューション9コレクションのモデルは装着性の良さが特徴です。SLGA021に搭載されているキャリバー9RA2は薄型であるだけでなく、りゅうずの取り付く位置を裏ぶた側に寄せることによって低重心化を実現しています。一見しただけでは気がつきにくいこの優れた設計によって、時計全体の重心が下がり、装着時に手首の上でのバランスが非常に良くなるのです。また、りゅうずに関してはその操作性にも細心の注意が払われています。キャリバー9Rシリーズは時刻合わせの際の使いやすさを考慮して、りゅうず1回転で分針が約30分動くように設計されています。

エボリューション9スタイルは1967年の44GSで確立したデザインを基にして、審美性、視認性、そして装着性の進化を目指して編み出されたデザイン文法です。ケースの重心を低くして、ブレスレットの幅を広げたことにより、手首の上での安定感が高まり、快適な装着性がより一層高まりました。

このケースの低重心化は、キャリバー9RAシリーズで実現したムーブメント設計の進化のおかげですが、この革新的なキャリバーやそれを格納するケース、そして文字盤や針までも信州 時の匠工房で一貫してつくられているので、時計を構成する各要素が緊密に連携できるのです。

9Rスプリングドライブムーブメントを搭載したグランドセイコーは自然の時の流れを映し出し、自然との調和を追求しながら、心地よい装着感をも実現しています。正確で、見やすく、美しく、耐久性があり、さらに快適な着け心地も追求する。このようなグランドセイコーの姿勢は、「理想の腕時計を追求する」ブランドの姿勢とも言えるでしょう。