スプリングドライブ式のグランドセイコーが独自性を強く打ち出すことができたのは、二律背反する要素を巧みに組み合わせたからである。動力源はぜんまいでありながら圧倒的な高精度を実現し、電子制御なのに電池は不要。上質なデザインなのに実用的で、最先端でありながら伝統の力を感じさせる。その多様性が厚みとなって、新しい価値を作るのだ。

しかもスプリングドライブは、ムーブメントの設計思想自体も画期的だった。開発当初からプラットフォームを定めており、3針のCal.9R65をベースに、GMTのCal.9R66やクロノグラフのCal.9R86へと、進化を見越した設計にしている。こうすることでダイヤルデザインに統一感が生まれ、今後の発展にもつながる。さらにはムーブメントのメンテナンス効率が高まるというメリットも大きいだろう。

圧倒的な技術力を備えたグランドセイコーだからこそ実現できたスプリングドライブは、未来に向けた発展性や継続性もきちんと念頭に置いている。スプリングドライブは、積み重ねてきた腕時計技術の結晶であり、腕時計文化を未来へと前進させるための原動力でもあるのだ。