NEW VALUE 高精度とともに、新たな価値を提案していく。
機械式のグランドセイコーを新規開発する以上、スイス機械式腕時計の精度基準であるクロノメーター規格を超える精度を実現するのが、最低限のハードルとなった。まずは、既存の4S系ムーブメントに入念な調整を施し、1996年にスイスのクロノメーター検定協会の認定テストに提出。4個中3個が合格となった。これによってセイコーの機械式腕時計技術が鈍っていないことが証明された。次はさらに特別調整を施したムーブメントを500個製造し、これらもスイス・クロノメーター検定に合格した。これらを搭載したモデルをクレドールブランドから1998年に発売。この500本は大好評のうちに販売され、高精度機械式腕時計の価値にあらためて気付かされたのだ。
しかし、まだ問題は残っていた。この4Sムーブメントのポテンシャルでは、クロノメーター級までしか精度を実現できないので、その上を目指すグランドセイコーには搭載できない。98年に制定された新GS検定は、平均日差が−3~+5秒(クロノメーター基準は−4~+6秒、以下同)、検定姿勢は6姿勢(5姿勢)、検定日数は17日(15日)というもの。グランドセイコー専用の新規機械式ムーブメント「Cal.9S」の開発では、この非常に厳しい基準のクリアが必要だった。
その際に役立ったのが3D-CADシステムの活用だった。実はこれを当時のセイコーインスツルメンツが開発しており、いち早くムーブメント開発に取り入れることができたのだ。過去の設計資料を参考に歯車の形状の検討や輪列のシミュレーションなどを行い、さらにこのデータを活用してプロトタイプの製作もスピーディに進めた。調速機も新たに開発され、ひげぜんまいの形状も特殊な内端カーブを採用することで、GSの名に値する高精度が実現した。同時に、“所有する喜び”を感じるデザインを目指して、「クラシカル」と「コンテンポラリー」と名づけた2つのスタイルが考案された。
そして1998年。ついに完成した9Sムーブメントを搭載する2モデルが発売。それは高級機械式腕時計の市場に、グランドセイコーが帰還した瞬間であった。
機械式のグランドセイコーを新規開発する以上、スイス機械式腕時計の精度基準であるクロノメーター規格を超える精度を実現するのが、最低限のハードルとなった。まずは、既存の4S系ムーブメントに入念な調整を施し、1996年にスイスのクロノメーター検定協会の認定テストに提出。4個中3個が合格となった。これによってセイコーの機械式腕時計技術が鈍っていないことが証明された。次はさらに特別調整を施したムーブメントを500個製造し、これらもスイス・クロノメーター検定に合格した。これらを搭載したモデルをクレドールブランドから1998年に発売。この500本は大好評のうちに販売され、高精度機械式腕時計の価値にあらためて気付かされたのだ。
しかし、まだ問題は残っていた。この4Sムーブメントのポテンシャルでは、クロノメーター級までしか精度を実現できないので、その上を目指すグランドセイコーには搭載できない。98年に制定された新GS検定は、平均日差が−3~+5秒(クロノメーター基準は−4~+6秒、以下同)、検定姿勢は6姿勢(5姿勢)、検定日数は17日(15日)というもの。グランドセイコー専用の新規機械式ムーブメント「Cal.9S」の開発では、この非常に厳しい基準のクリアが必要だった。
その際に役立ったのが3D-CADシステムの活用だった。実はこれを当時のセイコーインスツルメンツが開発しており、いち早くムーブメント開発に取り入れることができたのだ。過去の設計資料を参考に歯車の形状の検討や輪列のシミュレーションなどを行い、さらにこのデータを活用してプロトタイプの製作もスピーディに進めた。調速機も新たに開発され、ひげぜんまいの形状も特殊な内端カーブを採用することで、GSの名に値する高精度が実現した。同時に、“所有する喜び”を感じるデザインを目指して、「クラシカル」と「コンテンポラリー」と名づけた2つのスタイルが考案された。
そして1998年。ついに完成した9Sムーブメントを搭載する2モデルが発売。それは高級機械式腕時計の市場に、グランドセイコーが帰還した瞬間であった。
Cal.9S5系では新型の調速機を搭載。さらに外観も美しく仕上げられており、ブリッジや回転すいには美しい波目模様が施されている。(写真はGMT機能付きのCal.9S56)
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Cal.9S5系では新型の調速機を搭載。さらに外観も美しく仕上げられており、ブリッジや回転すいには美しい波目模様が施されている。(写真はGMT機能付きのCal.9S56)
所有する喜びを提案する、2つのデザイン。
1998年
クラシカル 9S51
初代グランドセイコーを目標にデザインされた、クラシカルなモデル。ケースは18Kで、カレンダーはなし。デュアルカーブ型のサファイアガラスを使用していた。
1998年
コンテンポラリー 9S55
グランドセイコーのデザインを革新し、現代的に表現しているモデル。ケースが厚くなった分、究極の研磨技術を駆使して、三次曲面も歪みなく磨きあげた。
COLUMN
幻のクロノメーター表示モデルとは?
20数年ぶりに復活する機械式9S系グランドセイコーの開発にあたっては、当初はスイス・クロノメーター規格を採用する案もあったが、1960年代に制定されたGS検定をさらに厳しい基準とした新GS 検定を制定して、矜持を見せることになった。開発初期段階では初代グランドセイコーと同じ書体で“Chronometer”と記したプロトタイプも製作。